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著者コメント

レスサスのジレンマ

(学研)

アメリカをクルマで旅していると、レクサスの成功ぶりがよくわかる。
大きな街の出入り口に自動車ディーラーが並んでいる一角の一番いい場所に、立派できれいなショールームを構えているのは、決まってレクサスだ。
構えているだけでなく、クルマと人の出入りが多いことが何よりの繁盛を示している。

レクサスは、1989年に、第一号車の「LS」を発売して以来、ラインナップを拡充し、2005年末時点で23万台以上の売り上げをアメリカで記録している。
大成功しているレクサスブランドを、トヨタは地元である日本で2006年から展開すると発表。導入準備とトヨタの目論見、 新富裕層マーケティングなどについて一年間取材を行ったルポルタージュを自動車雑誌『ルボラン』誌に発表した。
この本は、その連載をもとに、レクサスの日本導入前後の様子を追加して一冊にまとめたものだ。

トヨタは、国内外で“一円でも安くクルマを造り、一台でも多くのクルマを売る”ことによって、今日の世界一の地位を築いてきた。

「かんばん方式」に代表される徹底したコスト削減手法は、自動車メーカーに限らず世界中の手本となった。

しかし、レクサスの日本導入に際して彼らが標榜した“高級車レクサス”を作って売るということは、成功の源泉となったトヨタウェイの正反対を行わなければならないのではないだろうか。高級車なり高級品というものは、“価格の高さを顧客にどれだけ納得させるかの知恵比べ”だからだ。

機能が優れていることに加え、ブランドの暖簾代に大枚を支払わさせられるかどうか。
ルイヴィトンのバッグは、モノがたくさん詰め込められるわけではなく、ロレックスは正確さではスウォッチに絶対かなわない。
それなのに、なぜ、顧客は嬉々として高級ブランド品や高級車を求めるのか。
「高いじゃないか!」と文句を言う者など、ハナッから店に来ない。
そのように、レクサスをありがたがって買ってくれる者が、日本にはどれだけいるのか。

トヨタが行ってきた、“安く作って、たくさん売る”ということと“高級車レクサス”ははたして矛盾しないのか。
書名の“ジレンマ”は、そこに由来している。

レクサスが克服しなければならない課題と、なぜレクサスがアメリカで成功を収めたのか。
その二点について、さまざまな角度から考察し、最後に、レクサスは日本で成功するのか問うている。
実際のレクサスの販売は、導入以来、ずっと苦戦を続けている。

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